目次
東大航空院試の数学出題範囲
体験記に入る前にまず、東大航空院試数学の簡単な説明から入ります。
この記事でも紹介したように
東大院試の数学は、2022年度から、
数学1(40分) | 主に「微分積分および微分⽅程式」と「級数・フーリエ解析および積分変換」 |
数学2(40分) | 主に「ベクトル・⾏列・固有値(線形代数)」と「曲線・曲面」 |
数学3(40分) | 主に「関数論・複素数」と「確率・統計,情報数学,その他」 |
(令和4(2022)年度修士課程学生募集要項より引用)
となっており、航空宇宙専攻では、これら全てについて解答する必要があります。
例年では6題から3題を自分で選ぶ形式でしたので
単純計算で考えて、例年と比べると出題範囲が倍になりました(泣)
要項を見た時は絶望しました笑
専門科目もあるのに、範囲広すぎ…泣
試験前は、選択形式のままであって欲しいと心の中で思いつつ、全範囲の対策をしていました。
試験前夜
自分は家が遠かったので、試験前日からホテルに泊まっていました。
2つ他の大学の院試を受けていたし、受験慣れして落ち着いて当日を迎えられるかなと思っていましたが、
やっぱり緊張で寝られませんでした笑
日付が変わるギリギリまで数学の過去問の見直しをしていました。
試験直前
数学の試験開始時間は13:30~16:30と、朝は余裕があったので、前夜と同様、
過去問を見返して出そうな問題の解法を頭に刻み込んでいました。
そして試験30分前ぐらいに会場に向かうと、コロナ感染対策のためか、
たくさんの受験生が書類を書かされたり、体温を測られたりしながら、教室に入っていました。
会場は地下にある教室だったので、少し蒸し暑かったです笑
机には飛沫防止のアクリルと段ボールでできた手作り感満載の仕切りがしてあり、
個人のスペースは少し狭かったです。
試験時間ギリギリまで自分も含め、学生たちはiPadやノートを見て復習をしていました。
試験10分前ぐらいになると、荷物をしまうように指示され、
試験終わりまで取り出すことができない旨を試験官から伝えられました。
試験の合間にも復習ができると思い込んでいた僕は少し後悔…
確率や複素数の復習は浅いままに試験に突入してしまいました。
試験前には一つの単元だけでなく、全体を軽くおさらいしておくことをお勧めします
そして、試験官が用紙を配布し始め、試験前特有のあの緊張感が教室を包みました。
僕はというと、表紙に書いてある「二問全てを解答せよ」
という文言に「やっぱり…」と落胆していました笑
フーリエをあまり勉強していなかったので、
25分で微分積分、15分でフーリエといった時間配分でいこうと決めました。
そして、試験が始まりました。
数学Ⅰ
数学Iは要項では、主に「微分積分および微分⽅程式」と「級数・フーリエ解析および積分変換」
が出題されるとされていますが、蓋を開けてみると
「楕円に関する微分積分問題」と「基本的なラプラス変換の公式導出とそれを使った微分方程式」
でした。(フーリエじゃないんかい!のツッコミは全員が心の中でしたはず笑)
微分積分の方を見るといつも先頭にくるはずの常微分方程式が見当たらなったので、
ひたすら勉強していた僕としては少しがっかり…
しかし、見たところ手も足もでない問題ではなさそう…
むしろ高得点狙えるのでは!?と思い、簡単そうなラプラス変換から手をつけ始めました。
ラプラス変換では、なんと優しいことにラプラス変換の定義式が記されており、
これを使ってsin(ωt)とcos(ωt)のラプラス変換を求めよと言うのが(1)、(2)になっていました。
(部分積分使うか、オイラーの公式で実部と虚部に分ける方法で簡単に求まるあれです。)
忘れてしまいましたが、その次も何か簡単な問題があり、
最後はラプラス変換を使った定数係数微分方程式がありました。
ここもささっと解いてしまい、時間にそこそこの余裕ができたため、
楕円の問題はゆっくりと解くことができました。
こちらは楕円上のある点(a, b)における接線を求め、その楕円の接点からx軸切片まで、
接線と楕円に囲まれた面積を求める…とかの問題だったと思います。
時間の余裕と見た目の簡単さから油断してしまったのか、これには若干苦戦してしまいました。
一応、最後の問題に取り掛かるぐらいまでは解きました。
そして、あっという間の40分が終わり、解答が回収されました。
終了直後はそれなりの点数を稼ぐことができたと思い、若干舞い上がっていました笑
しかし、周りも解けたような明るい雰囲気が伝わってきたので、気を引き締めつつ、トイレ休憩に行きました。
数学Ⅱ
数学Ⅱは主に「ベクトル・⾏列・固有値(線形代数)」と「曲線・曲面」です。
簡単に問題の内容をまとめると
「行列の同時対角化にまつわる証明問題」と「二次形式の標準形と、体積計算」
でした。
まず、行列の方から取り掛かると、最初は定番の固有値、固有ベクトル計算が出題。
ここはミスに注意しながらも手早く解きました。
その後、同時対角化に絡めた証明問題が出題されました。
同時対角化と言うのは、
二つの対称行列A,Bについて,AB=BA⟺Aと Bは同時対角化可能
のやつです。これに絡めた問題が出題されました。
2、3問程証明問題があったと思いますが、一つだけ解いて、
後は思いつかなさそうだったのでもう一つの大問に切り替えました。
「曲線・曲面」と表紙に書いてあったため、それに関する問題が大半を占めると思いきや、
「曲線・曲面」の問題は体積計算のみで、この大問中の最終問題に一問だけ出題されました。
具体的には、H20年度の大問2にも出題された「二次形式の標準形」が今年度も出題されました。
複数の変数から成る二次式を「二次形式」と言いますが、
これを異なる変数同士の積を持たない二次形式(標準形)に変形する問題です。(変数をスッキリまとめてしまうイメージ)
聞こえは難しそうですが、実際には二次方程式を行列に直してやり、固有値、固有ベクトルを求め、対角化することで標準形を求められます。
この操作をすると、H20年度同様、楕円面が求められ、これを最終的にある領域で体積計算する、と言う問題でした。
自分はこの「二次形式」については出題される予感がしていたので、山が当たってラッキーでした笑
最後の体積計算をする所まではいきませんでしたが、全体で6、7割は取れていたと思います。
数学Ⅲ
数学Ⅲは主に「関数論・複素数」と「確率・統計,情報数学,その他」です。
簡単に問題の内容をまとめると
「留数定理を用いた簡単な複素積分」と「ベイズ推定(?)」
でした。
複素数では、積分経路がぐるぐると糸のように回っている複素積分が出題されました。
これは経路が何回時計回り、反時計回りしているかに注意すれば、基本的な留数定理の問題と変わらない問題です。
もう一つか二つ小問がありましたが、こちらも留数定理を使う簡単な問題で、
鬼問が出題されやすい複素関数でこれ程簡単な問題を出題するのは、
東大側からの「絶対落とすなよ?」と言うメッセージのようにも感じました笑
そして堅実に複素数を解き終わった後、確率の方に取り掛かろうとすると
ん…???
手が止まりました。一般的な確率問題とは雰囲気がだいぶ違う…
後で調べて分かったことですが、これは最近流行りのデータサイエンスのツールとなっている「ベイズ推定(推論)」をベースとした問題でした。
確率の対策を怠っていた僕を焦らすには十分すぎる内容…
案の定、一問しか解けず撃沈、あっという間の40分でした…
試験終了後、周りから落胆するような音が聞こえていたので、
他の人も解けなかったのかな…と思いつつ、会場を後にしました。
全体の感触としては最低でも6割あるかな…?ぐらいで終わった初日でした。
まとめ
今回の試験内容をまとめると
数学1(40分) | 「楕円に関する微分積分問題」と「基本的なラプラス変換の公式導出とそれを使った微分方程式」 |
数学2(40分) | 「行列の同時対角化にまつわる証明問題」と「二次形式の標準形と、体積計算」 |
数学3(40分) | 「留数定理を用いた簡単な複素積分」と「ベイズ推定」 |
といった感じになります。参考になりましたでしょうか?
もしまだ対策をしていないのであれば、オススメ参考書を紹介している記事があるので
こちらを参考にしてみてください!
二日目の専門科目編に続きます!